EVENT Report

〜タバコ会社は知っている。すべてを知りながら嘘をついているんだ〜

映画『インサイダー』のモデル、ワイガンド博士 来日特別講演より

▲講演後、参加者からの質問に答える:短い時間ではありましたが、質問内容も回答も意義深いものでした。
左から、WHOのライリー博士、CAN DO原宿代表の宮崎さん、ワイガンド博士、禁煙外来に力を入れている医師の斉藤さん
 ジェフリー・ワイガンド博士は、映画『インサイダー』でラッセル・クロウが演じた主人公の実名モデルです。タバコ産業は莫大な資本と政治力にものをいわせて長い間タバコの毒性を隠し続けてきましたが、B&W社の元幹部だったワイガンド博士の告発が突破口となり、1990年代以降、アメリカのタバコ被害訴訟では高額な賠償金の支払い判決が次々と下されているのです。

                                    

 ワイガンド博士は「ドーモ、ドーモ」と日本語で挨拶しながらにこやかに登場。ステージの端っこへじかに腰掛け、客席にぐっと近い距離でスピーチするなど、とってもフレンドリーな方でした。

「これからお話しするのはタバコ会社に対する非難や中傷ではなく、わたしが見た“真実”です」

 博士がB&Wタバコ会社に勤めたのは1988年からの約4年間。科学者として“より安全なタバコ”の開発に取り組むためでしたが、その内幕は矛盾だらけてビックリ!

「タバコは40008000種類もの化学物質を発生させるゴミにすらできない代物。人体にダメージを与えないタバコなど存在しないんです」

 研究結果の記録・公表にいちいち弁護士が介入することにも不審を感じました。博士は病気の発症率が比較的少ないタバコを開発したのですが、その成果ももみ消されます。なぜって、“より安全なタバコ”を発売すれば、今までのタバコが有害だったと自ら認めたことになるからです。

「タバコ会社は2つのウソに支えられて存続しています。

1つ目は『喫煙と病気に関連性はなく、軽いタバコを選べばより安全である』というウソ。

2つ目は『ニコチンに依存性はない。喫煙者は“味”が好きで吸っている』というウソです」

(日本のJTや財務省も同じこと言ってますよね)

 一方でタバコ会社は、

「遺伝子工学を使ってニコチン含有量を増やしたり」

「アンモニアでニコチン吸収率をアップさせたり」

「チョコレートや甘味料などの添加剤で口当たりをごまかしたり」

することに余念がありませんでした。しかも、そうした“機密”に触れる議事録は廃棄されたのです。

 「わたしはいくつかの医薬品メーカーで仕事をしましたが、ばれると都合の悪い資料を廃棄する会社なんて見たことがない」

 タバコ会社の“裏切り者”に対する処置は知っていました。それでもワイガンド博士は告発に踏みきりました。家族まで巻き込む悪質な嫌がらせや脅迫に怯え、苦しみながらも……。

 「『もう一度同じ目に遭ってもやるか?』と聞かれれば……やりますよ」

ワイガンド博士の言葉に一同じ〜ん……。会場から大きな拍手がわき起こり、60分間の講演は終了しました。

                                    

 映画のワイガンド博士はいつも悩んでいましたが、ご本人は明るく朗らかな表情が印象的な紳士。真実とともに生きることで、心が晴れ晴れとしたのでしょう。

 そういえば、昨年(2000年)の禁煙デー・イベントにおいでいただいたフィリップモリスの“インサイダー”(元研究員)ビクター・デノーブル博士もかっこよかったなあ!

 JTの皆さん、財務省の皆さん、21世紀はパーッと内部告発でもして、さわやかに生きてみませんか!

 [文: どどんがみひゃひゃ]