2002年5月31日
シニアワーク東京 B2講堂 (飯田橋) 18:30〜21:00
参加者約200名
主催・タバコ問題首都圏協議会
後援・禁煙推進議員連盟
全国禁煙・分煙推進協議会
日本禁煙推進医師歯科医師連盟
1. 開会挨拶
- 中久木一乗/タバコ問題首都圏協議会事務局長
- 市来英雄/全国禁煙・分煙推進協議会会長
「 今日から始まったワールドカップはタバコを排除した大会になります。先進国から20年遅れている日本も禁煙に関する取り組みを進めていきましょう。」
2. リレートーク(司会 渡辺文学/タバコ問題首都圏協議会代表)
1)「未成年者の喫煙はなぜ減らないのか」 佐々木克仁/禁煙教育をすすめる会 事務局長
- 喫煙を始めた子供に禁煙させることは極めて困難。最初の1本を吸わせないこと
が重要。
- 成人喫煙者の半数は10代から喫煙。原因は「メディアでの喫煙シーンの増加」「周囲の大人の影響」「自販機で簡単に入手できる環境」。
2)「自治体のタバコ対策をどう進めるか」 飯田豊彦/足立区議会議員
- 「タバコの害」に関する講演会を開いて理解を求める活動から行った。
- 中央本町庁舎は、計画段階から分煙庁舎を目指し、完全分煙の庁舎を完成させた。
- 平成8年には非喫煙区画には煙が一切行かない喫煙コーナを持った新庁舎が完成した。
3)「妊婦と幼児のタバコ問題」 斎藤麗子/禁煙推進医師歯科医師連盟幹事
- 以前は妊娠すると禁煙したが、最近は禁煙しない。妊婦の喫煙率は平成2年:5.6% 平成12年:10.0%、10代では1/3が喫煙者である。
- 妊娠中の喫煙は胎児に重大な影響を与える。妊娠中のタバコは「胎児虐待」と言える。
4)「安全で快適な千代田区の生活環境の改善に関する条例(案)概要」
高橋康夫/千代田区環境土木部長(千代田区長代理)
- 千代田区では生活環境条例案に「歩きタバコ禁止」を盛り込んだ。
- 条例案は「街の中が汚い」ことが発端。もはや「マナー」では解決しない。
- 啓発活動、指導を徹底し、指導に従わないものには積極的に罰則を適用する。
5)「タバコのコストと価格政策」 望月友美子/国立保健医療科学院
- 喫煙による「超過医療費」は1兆3000億円。癌以外の病気が47%もある。
社会損失全体では5兆円に及ぶと推計され、タバコ税収をはるかに上回る。
- 年々増加する 医療費は30兆円に達し、その4.3%が喫煙に起因。
- タバコ税を1箱100円上げると4400億円の増収になり、種々の禁煙関連政
策が採れる。
6)「タバコ・ポリテックスの構造変化」 武見敬三/参議院議員
- 日本では「タバコ・ポリテックス」が必要である。「自分の健康は自分で守る」、 国民に、いかにしてこの考えをもってもらうかが重要。タバコ問題の啓蒙活動は喫煙 率が増加している「若い女性」をターゲットにする必要がある。
- 財務省はJTへの天下り、農水省は葉タバコ農家を巻き込み、巨大な「政治力」を形成。
- 問題解決にはNGO、医学界、マスコミ、国民が共通認識を醸成することが重要。
7)「禁煙推進議員連盟のめざすもの」 小宮山洋子/参議院議員
- 国会に入って一番びっくりしたことは、委員会室の各席に灰皿が置いてあること
だった。
- 超党派の「禁煙推進議員連盟」を64名で発足、現在89名。
- 本日、参議院の全委員会を禁煙にするよう議院運営委員長に申し入れを行った。
ちなみに、衆議院では全委員会が禁煙となっている。
- 科学的根拠に基づく「活動する議連」として、「知識の共有」「啓蒙活動」「法制
化」に努め、NGOともタイアップして行きたい。
8)「大詰めを迎える『たばこ病訴訟』」 伊佐山芳郎/弁護士
- 「たばこ病訴訟」は患者7名が原告となってJTを提訴。原告3名が死亡、現在
4名。
- 日本では「たばこ事業法」が元凶で、最大のネックである。
- 既に証人尋問も終了し、結審間近。喫煙と病気の因果関係はJTの反論にも反駁。
- JTがオーストラリアで販売しているマイルドセブンには「肺癌になる」「心臓病になる」との警告文が書かれている。
「危険の引き受け理論(自業自得論)」に対するJTの抗弁は否定されるであろう。
3.パネルディスカッション(司会:渡辺文学)
パネリストはリレートークの発言者全員。会場から集めた質問にパネリストが回答。
Q:職場は分煙になっているのに、上司は自分の席で吸っている。足立区ではどうか?
A(飯田):足立区役所では全部喫煙コーナのみで喫煙している。
A(斎藤):東京都庁は各階に喫煙室がある。個室を持つ部長には自室で吸うものもいる。
Q:世界禁煙デーを国民の祝日にしたい。
A(武見):すばらしい提案だ!
禁煙議連は立ち上がったばかりであり、議会、NGO、市民の
ネットワークが大切。メディアもうまく使う必要がある。
Q:喫煙者も被害者である。禁煙には助成も必要ではないか?
A(斎藤):自治体の健康診断を受けた人の生活習慣病指導には禁煙指導も入っている。
Q:小学校の禁煙教育には専門家が必要ではないか?
A(佐々木):禁煙教育に専門家を紹介することが多くなってきている。
生徒からは害のあるものをなぜ売るのか、大人はなぜ喫煙するのか?との
疑問がでる。
Q:専修大学では喫煙の方が優先で困っている。他の大学では?
A(斎藤):最近医大では禁煙が進んでいる。
東京医科大では構内禁煙で、構内でタバコは売っていない。
多くの病院の売店でタバコを売っており、対応が必要である。
Q:たばこ病訴訟について状況を聞きたい。
A(伊佐山):勝訴の可能性は80%と言える。
勝訴すればハンセン氏病の例もあり影響は大きい。
2次訴訟、刑事告発の話も出てくる。年間9万5千人も死んでいるから。
Q:千代田区の条例でも罰則をもっときつくして欲しい。
A(高橋):路上禁煙地区での喫煙は過料の上限の2万円としている。
「千代田区に来たら路上でタバコは吸えない」と皆が思うようにしたい。
Q:小泉総理や自治体の首長はどのような意見を持っているか?
A(小宮山):小泉総理は「総理でいる間はどの議連にも属さない」と言っている。
禁煙議連を辞めた3名はタバコ事業者から強い圧力があったとのこと。
Q:小児科医師会としての取り組みは?
A(斎藤):受診時の問診で親の喫煙の有無等を聞く。
母親学級でタバコ問題を取上げるなど。
Q:軽さが売り物のタバコの欺瞞性はなんとかならないか?
A(望月):製品の中身に定めがない。そのためJTは製法も添加物も一切秘密。
「タバコ」の所管を財務省から厚生労働省に移管すべき。
厚生労働省なら成分の規制 も可能。
Q:近隣からのタバコ被害に法的対応が取れないか?
A(伊佐山):なかなか難しい問題である。これからの問題であろう。
4.今回のシンポジウムについて各パネリストから一言づつ感想が述べられた。
- 佐々木:子供の高喫煙率は社会環境に問題。買いやすさ、メディアでの露出等が
問題。
- 飯 田:外国では、タバコを吸う議員は落選する。日本でもそのようになって欲
しい。
- 高 橋:千代田区では路上禁煙地区をつくる。人も金も投入する。ぜひ協力を。
- 斉 藤:非喫煙者のタバコ問題に対する関心が低い。啓蒙活動を推進したい。
- 望 月:情報は力である。情報を手にして、一緒に頑張ろう!
- 武 見:科学的根拠で政策を推進。健康増進法は不十分だが分煙推進の法的根拠
になる。
- 小宮山:国会で疑問と思って活動し、禁煙議連発足につながった。ぜひ情報がほ
しい。
- 伊佐山:たばこ事業法は憲法、自由人権条約、社会権条約に違反。
- 渡 辺:たばこ事業法と健康増進法との綱引きで、健康増進法が勝つ状況にしたい。
5.「2002年世界禁煙データバコ規制対策推進アピール」を参加者一同で確認。
6.閉会挨拶 宮崎恭一/全国禁煙・分煙推進協議会事務局長
「アメリカでの告発で、タバコへの添加物が599種類も使われていることが明らかとなった。日本ではまったく明らかにされていない。また、葉タバコ乾燥のために発展途上国の森林が伐採されている。
WHOの「国際タバコ規制枠組条約」に対し、日本政府はザル法にすべく画策している。まだまだ我々のやるべきことは多い。
最後に、このような素晴らしいシンポジウムが開催されたことに対し、参加者、スタッフに感謝します。」