タバコQ&A
 

タバコ問題やタバコそのものに関する“素朴なギモン!”にお答えします。

Q1 タバコにはどんな害があるの?
A1 病気になる危険がいっぱいです。
 タバコの煙の中には約4,000種類もの化学物質が含まれ、その中には発がん物質・発がん促進物質が約200種類あります。
 ニコチン・ベンゼン・ダイオキシン・カドミウム・ヒ素・一酸化炭素といった、健康や環境に悪影響を与える物質が多数含まれています。
 また、タバコの中に含まれる有害物質は肺がんや肺気腫、喉頭がん、心臓病、歯周病などの原因となっていることが明らかとなっています
 特にニコチンには強い依存性があり、タバコを止めたくても止められないのはこのニコチンに原因があるのです。WHO(世界保健機関)では「精神及び行動異常症」として分類し、薬物依存症の専門家は、ニコチンの精神依存性はヘロインやコカインと同等ないしはそれよりも重いとしています。

Q2 タバコはまわりの人にも害を及ぼすの?
A2 まわりの人の方がもっと危険です。
 タバコの先から立ち上る煙を「副流煙」といいますが、これは喫煙者が吸っている「主流煙」や「吐き出す煙」よりも強い毒性があります。この副流煙などを吸わされることを「受動喫煙」といい、いま被害の大きさからいって、こちらのほうが問題となっています。
 主流煙と比べ副流煙には、タール3.4倍、ニコチン2.8倍、一酸化炭素4.8倍、アンモニア50倍、発がん物質のジメチルニトロサミンは100倍もの有害物質が含まれているので、タバコの害はむしろ副流煙がまわの人に及ぼす被害の方が大きいといえます。

 この他に、歩きタバコの被害、タバコの不始末による建物や山林の火災、ポイ捨てによる街の汚れなど、まわりの人が被る害にはとても大きいものがあります。

Q3 妊娠中にタバコを吸うと赤ちゃんに悪いの?
A3 大変悪い影響があります。
 厚生労働省が発表した「2000年乳幼児身体発育調査」によると、妊娠中の母親の喫煙本数が多いほど、出生時の赤ちゃんの体重や身長が低下することが明らかになりました。
 また、妊娠中の喫煙は、流産、早産、死産の原因ともなり、出生後の子どもの成長にも悪い影響を与えることが明らかとなっています。
 中でもタバコの中に含まれるニコチンは、胎児の循環器、呼吸器、神経系、内分泌系の働きに悪影響を与え、胎児の正常な発育を脅かしているのです。

Q4 タバコを吸うとやせるって本当なの?
A4 「うそ」です。
 タバコを吸っている人で太っている人もいれば、タバコを吸わない人でやせている人もいます。
 喫煙により食べ物の味が悪くなり、味覚障害を起こし、ニコチンの作用で胃液の分泌が抑えられ、食欲を無くして結果的にやせてしまうケースはあるようです。
 これとは反対に、タバコを吸わないと味覚がよくなり、食べ過ぎて太ってしまうということもあるようです。
 しかしながら、喫煙で自分の体のコンディションを崩し、食欲をなくし、また栄養の補給を自ら阻害して結果的に「やせる」というのは、どう考えてもおかしなことです。

Q5 タバコは「お肌の大敵」なの?
A5 「大敵」です。
 タバコを吸うとニコチンの血管収縮作用によって血液循環に障害をきたします。そのため肌に張りがなくなり、シミが目立ち、顔色も悪く、細かいしわができます。
 また、タバコによって体内のビタミンCの貯蔵量が不足となり、メラニン色素が沈着しやすくなり、どんなに高級なクリームをつけても追いつかなくなります。
 また、喫煙者の中には顔色だけでなく唇の色が悪い人がいますが、これは喫煙によって一酸化炭素を吸い込み、血液中のヘモグロビンが酸素を運べずに一酸化炭素を運んでしまい、酸素不足となるためです。

Q6 タバコを作るために多くの木材が使われるって本当なの?
A6 毎年、長野県2つ分の森林が消えています。
 タバコの葉を乾燥させるために、世界で毎年長野県二つ分(東京ドーム580個分)もの森林が喪失しています(WHO1990年推計)。
 また、紙巻タバコ1本あたりに使われる紙は0.1グラムで、日本における年間消費量の3,000億本をかけると3万トンになります。この他に包装用の紙を加えると30万トン近くにもなり、これは日本の紙消費量の1%以上に相当します。

Q7 タバコが原因の火事ってどれくらいあるの?
A7 東京では、1977年から火事の原因の2位が続いています。
 全国でもタバコの火の不始末による火災は毎年上位を占めています。
 1998年の統計では、国内の火災のうち6分の1にあたる5,690件はタバコが原因だとされています。
 被害額は1,175億円。また、山林火災で原因が特定できないものでも、その一定割合はタバコが原因だと見られています。
 東京でのタバコによる火災は、1999年には1,061件発生し、全火災件数の15.7%を占めています。
 火が付いたまま捨てたタバコの温度は700度にも達し大きな危険性をもっています。

Q8 タバコが原因の病気で1年間の医療費はいくらになるの?
A8 年々増えていて、今では5兆円になると言う人もいます。
 財団法人 医療経済研究機構が1993年の医療費を元に試算したところによると、1993年の国民医療費 総額24兆3631億円の約5%にあたる1兆1512億円が、喫煙によってもたらされた疾病の医療費の増加分だとしています。

 また、東京薬科大学岡教授によると、このような「無駄な医療費」はもっと増加していて、タバコが原因で発病した喘息や肺がんなどの治療には4兆4〜9千億円もかかっており、タバコ税収の年2兆2千億円をはるかに超えているとしています(朝日新聞 2001年7月25日付け『私の視点』より)。

 医療費全体の抑制を図るためにも、禁煙をすすめ、タバコの害を減らす社会環境を作ることが求められていると言えます。

 尚、2002年11月には、喫煙による経済損失は年間約7兆4000億円という試算が発表されました。
医療経済研究機構が、たばこが原因の病気の医療費や入院・死亡で失われる労働力を計算したもので、 内訳は以下の通りです。

能動喫煙超過医療費   1兆2900億円
受動喫煙超過医療費      146億円
逸失される労働力の損失 5兆8000億円
火災による損失       2200億円

経済面の観点からも、喫煙率を下げる必要があると言えます。

Q9 有害なタバコの販売を、なぜ国は許可しているの?
A9 JTの株をたくさん持っているからです。
 世界の各国がタバコを有害物、麻薬と認定しているのに、日本はいまだにタバコは趣味、嗜好品としています。
 その理由は次の事実とは無関係ではないと思われます。

 わが国では、明治時代から政府自らがタバコを製造・販売してきた長い専売制度の歴史があります。
 1985年には一応「民営化」されはしましたが、財務省が株式の7割近くを持ち、また日本たばこ産業(JT)の歴代社長には、財務省の高級官僚が就任していることから、国の喫煙規制は及び腰で、むしろタバコを推進する立場となっているのが実態です。

 医薬や化学薬品の製造販売においては、安全性に問題があれば、法律や条令でいろいろな規制がなされています。しかし、タバコが安全性に問題があるからといって、法律や条令によって規制し、販売を止められない理由の一端がここにあるようです。

 また、タバコの製造・販売を禁止するというのも必ずしも良策とはいえません。タバコは常用癖の人が多すぎることに加えて、タバコの栽培と密輸、密売が極めて容易だからです。
 タバコは健康問題であることはもちろんですが、それと同時に政治・経済の問題となっていることも、問題解決へ向けての重要な視点なのです。

Q10 国が認めているタバコに対して、どうして規制を求めるの?
A10 健康被害が多いからです。
 国が認めている商品であっても、危険防止等のために、その製造、販売、広告や、表示のしかた、使用方法などが法令で規制されている例は珍しくありません。
 これほど有害性が明らかとなっている商品の製造販売が、今日でも許可されているのは、これまで既に長年にわたって広く用いられてきたことと、国民の健康より目先の税収入が大切という、誤った国の政策によるものです。
 したがって、理論的にいえば、健康に害があることが明らかな以上、タバコの製造販売を法令で全面的に禁止しても少しもおかしいことはなく、禁止しないまでも、テレビ広告や自動販売機による販売を禁止し、公共の場での喫煙を禁止しても、法律上は全く問題がありません。

 世界の主な国々は、タバコの有害性を認識し、その規制を強化しようとしています。公共施設をはじめとして、ホテル、レストラン、酒場などに至るまで法律で喫煙を規制しているところもあります。
 日本は世界的にみれば非常にタバコ規制の甘い国で例外といえるほどです。21世紀の国際社会の中で、世界からタバコ対策の進んだ国として認められたいと考えるならば、もっともっと喫煙規制は強化されるべきなのです。

Q11 「完全分煙」って何ですか?
A11 喫煙場所から完全にたばこの煙が漏れないようにすることです。

 「完全分煙」とは、喫煙者のためにタバコが吸える部屋などを用意し、間仕切りや排気をきちんとし、非喫煙者のところにタバコの煙が完全に漏れてこないようにすることです。しかし、喫煙所から完全に煙が漏れないように設計することは、非常に困難です。また、従業員や喫煙者が、あるいは排煙口付近で他の部屋や他の施設が、受動喫煙被害をこうむる可能性もあります。
  2009年、厚生労働省の「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」でも、「基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべき。」としています。
  これからの時代は「分煙」でなく「完全禁煙」(無煙環境)こそが最も望ましいありかたです。

Q12 「たばこ病訴訟」って何ですか?
A12 タバコが原因で病気になった人が、国とJTに対して起こした裁判です。
 1998年5月15日、長年にわたる喫煙が原因で肺がん、肺気腫、喉頭がんなどの病気になった患者7名が日本たばこ産業(JT)と国を相手取り、東京地裁に起こした訴訟が「たばこ病訴訟」です。

 「自分が好きで吸っていたのだから“自業自得”ではないか」と言う声もありますが、タバコの主成分であるニコチンには強い依存性があり、喫煙者の7割以上が「やめたい」と思っていてもすぐには止められないのが実情です。
 ところが日本のタバコ会社は、タバコの依存性(中毒性)を隠して、大々的な広告・宣伝を展開し、「吸い続ける」ように仕向けているのです。

 アメリカでは「喫煙はがんの原因である」、カナダでは「喫煙はあなたを殺すかもしれない」、欧州連合では「喫煙は本人と周囲の人々を著しく害する」などの厳しい警告表示がなされています。
 ところが日本ではメディアやイベントなどを通して、「タバコはリラックスできる」「かっこいい」「うまい」などと喫煙を煽る宣伝を続けており、外国との格差はひどいというより、全く逆であるといえるものです。
 アメリカのいわゆる「たばこ病訴訟」では多額の損害賠償金の支払いを命じる評決が続々と出されています。日本におけるこの「たばこ病訴訟」は、JTと国の姿勢を問う画期的なものといえるでしょう。

Q13 私のおじさんは毎日タバコを20本も吸っていますが、とても元気です、どうして?
A13 運が良いだけです。
 タバコは多くの人の健康を確実に害しているのですが、たまたま長生きしているケースもみられます。だからといってあなたも長生きできるとは限らないのです。

 喫煙するということは、いわば高速道路を歩いているようなものです。中には車にはねられずに先へ進むことができる人がいるかもしれません。しかし、そんな人は少ないでしょう。また、危険を承知で歩くこともおろかなことです。あなたは危険を承知で高速道路を歩いてみたいと思いますか?

Q14 タバコの煙に空気清浄機は有効なの?
A14 タバコに含まれる一酸化炭素等の有害物質は除去できません。
 タバコの煙から出る有害物質は、粒子相(10.8%)とガス相(89.2%)からなっていて、空気清浄機ではタバコ煙の粒子相を100%除去できたとしても、それはタバコ煙有害物質全体から言えば10.8%が除去できるにすぎません。
 ガス相は全く除去できないため、一酸化炭素や発がん物質などガス状の有害物質の8割以上は空気清浄機を素通りし、全く浄化されることなく空気清浄機の排気口から出て、周囲に撒き散らされてしまっています。
 したがって、空気清浄機を設置し「分煙」をしているところでも、きちんとした仕切りがなければ『分煙』とは言えず、かえって有害物質を周囲に撒き散らしているだけだと言えます。

(注)このQ&Aを作るにあたっては、次の本を参考にしていますので、詳しく知りたい方はそれらの本をお読みください。

 ◆渡辺文学著『「たばこ病」読本』(2000年、緑風出版社刊)
 ◆伊佐山芳郎著『現代たばこ戦争』(1999年、岩波書店刊)